科学哲学者であるカール・ポパーと、神経生理学者であるジョン・エクルズ(エックルス)の共著である「自我と脳」の上巻を読んだ。
カール・ポパーは「科学理論は反証可能性を持つべきである」という主張をした有名な哲学者。一方のエックルスはばりばりのノーベル賞受賞神経生理学者で、東大の伊藤正男先生の元ボスでもある。そしてこの本の中心テーマが、ズバリ「心脳問題」。心と脳がどういう関係にあるのかを、この二人がどう議論しているのか、大いに興味がわいて読み始めた。
上巻はポパーが書いたもの。で、いきなりずっこけてしまった。心脳問題では通常、心と脳の2つの存在がどういう関係にあるのかが議論されていて、未だに決着がついていないのだが、彼はここに、我々人間の思考の中にある、芸術世界や科学世界を「第三の世界」とよんで、なんと
「心と脳の他に、この「第3の世界」もあるから、この3つの関係を調べていかないといけない」
と主張して、そのまま上巻が終わってしまった。。
をいをい。。。
いやいやこんなんで終わるわけがない!
下巻はいよいよ神経科学界のドン、エックルスの主張!
乞うご期待!
2016/01/22
2014/07/06
フェルマーの最終定理
数学系のかっこいいタイトルなので興味があったけどずっと読めていなかった本。
フェルマーの最終定理 (サイモン シン) (新潮文庫)
300年間、多くの数学者がその証明を試みたにもかかわらず証明出来ずにあったフェルマーのある予測がついに証明されるに至った、数学界のノンフェクションドキュメント。
そのプロセスの描写の中で、「数学者」と呼ばれる人々の日々の日常がリアルに映し出されていて、こんな研究生活もあるのだと、自然科学者の端くれである私にも大変刺激的であった。
特に、この証明を成し遂げた人物のとんでもないアプローチ法に仰天した。
自然科学者の研究哲学にも大いに影響しうる、確かに言わずと知れた名著であった。
フェルマーの最終定理 (サイモン シン) (新潮文庫)
300年間、多くの数学者がその証明を試みたにもかかわらず証明出来ずにあったフェルマーのある予測がついに証明されるに至った、数学界のノンフェクションドキュメント。
そのプロセスの描写の中で、「数学者」と呼ばれる人々の日々の日常がリアルに映し出されていて、こんな研究生活もあるのだと、自然科学者の端くれである私にも大変刺激的であった。
特に、この証明を成し遂げた人物のとんでもないアプローチ法に仰天した。
自然科学者の研究哲学にも大いに影響しうる、確かに言わずと知れた名著であった。
2014/06/20
銃・病原菌・鉄
数年前にベストセラーになっているのでもう読んでいる人が多いかもですが、この本。
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (ジャレド・ダイアモンド) (草思社文庫)
これは本当に面白い本だった。
「今のこの世界がなぜこうなっているか」という、一見どこから手を付けたらいいのか分からないような問題に、様々な分野の知見を統合することで答えを見いだしていこうという壮大な試み。
答えに近づくために一歩一歩思考を重ねていく。その一歩一歩が全部面白い。 全部はとても書ききれないけど、例えば人類進化の一部に関しては以下のような記載がある。
ネアンデルタール人は、クロマニョン人が現れる約4万年前まで数十万年に亘りヨーロッパで生息していた。
しかし彼らはクロマニョン人の出現から数千年で完全に姿を消してしてしまった。ネアンデルタール人とクロマニョン人が交配した証拠はほぼない。
クロマニョン人がネアンデルタール人を殺戮した可能性が高い。
ネアンデルタール人の脳は、現代人よりも大きかった。 しかし彼らは原始的な石器しか用いず、その狩猟に命の危険を冒すことの無い獲物のみを食料としていた。
一方、クロマニョン人は脳の大きさ自体はそれほど変わらないにもかかわらず、高度な石器をはじめ、獲物の骨を加工して針や槍を作製し、大型の動物や魚も捕らえて食料としていた。 また彼らが描いた壁画は現代においてもその価値が認められる程に芸術性が高い。
ネアンデルタール人とクロマニョン人の知的能力の差は、脳の大きさの差では説明出来ない。 代わりの説明として、咽頭の変化による発話能力の差や、脳の容量の変化を伴わない神経系の機能的な差が引き金となったことが提唱されているが、今でも何が彼らの知的能力の差を生み出したのかは明らかになっていない。
と、こんな興味深いことがわんさと書いてある。
人類史に興味がある人はもちろん、ない人にもに是非おすすめしたい。
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (ジャレド・ダイアモンド) (草思社文庫)
これは本当に面白い本だった。
「今のこの世界がなぜこうなっているか」という、一見どこから手を付けたらいいのか分からないような問題に、様々な分野の知見を統合することで答えを見いだしていこうという壮大な試み。
答えに近づくために一歩一歩思考を重ねていく。その一歩一歩が全部面白い。 全部はとても書ききれないけど、例えば人類進化の一部に関しては以下のような記載がある。
ネアンデルタール人は、クロマニョン人が現れる約4万年前まで数十万年に亘りヨーロッパで生息していた。
しかし彼らはクロマニョン人の出現から数千年で完全に姿を消してしてしまった。ネアンデルタール人とクロマニョン人が交配した証拠はほぼない。
クロマニョン人がネアンデルタール人を殺戮した可能性が高い。
ネアンデルタール人の脳は、現代人よりも大きかった。 しかし彼らは原始的な石器しか用いず、その狩猟に命の危険を冒すことの無い獲物のみを食料としていた。
一方、クロマニョン人は脳の大きさ自体はそれほど変わらないにもかかわらず、高度な石器をはじめ、獲物の骨を加工して針や槍を作製し、大型の動物や魚も捕らえて食料としていた。 また彼らが描いた壁画は現代においてもその価値が認められる程に芸術性が高い。
ネアンデルタール人とクロマニョン人の知的能力の差は、脳の大きさの差では説明出来ない。 代わりの説明として、咽頭の変化による発話能力の差や、脳の容量の変化を伴わない神経系の機能的な差が引き金となったことが提唱されているが、今でも何が彼らの知的能力の差を生み出したのかは明らかになっていない。
と、こんな興味深いことがわんさと書いてある。
人類史に興味がある人はもちろん、ない人にもに是非おすすめしたい。
2014/05/31
無趣味のすすめ
タイトルをみて意外性があったので読んでみた本(出版社の狙い通りの鴨?)。
無趣味のすすめ 村上龍 (幻冬舎文庫)
この著者はカンブリア宮殿というTV番組でインタビューアーをしていて、私もいつも楽しませてもらっていた。この本には世間で取りざたされている色々な風潮や流行り言葉、その背景にある凝り固まった考え方などに対する著者の意見が述べられていて、TV番組と同様に楽しくて一気に読み終えてしまった(ちょっと驚くほど文字が大きく、字数が少ないことも関係している)。
特に「効率化」と「ゆとり」、「仕事」と「生活」といった、対立関係で語られることが多い事柄が、ちょっと意識を変えるだけで融合して自然な「形」になりうることを指摘しているところが面白かった。
普通のとは違った、ちょっとひねくれた意見を聞くのが好きな人に、オススメです。
無趣味のすすめ 村上龍 (幻冬舎文庫)
この著者はカンブリア宮殿というTV番組でインタビューアーをしていて、私もいつも楽しませてもらっていた。この本には世間で取りざたされている色々な風潮や流行り言葉、その背景にある凝り固まった考え方などに対する著者の意見が述べられていて、TV番組と同様に楽しくて一気に読み終えてしまった(ちょっと驚くほど文字が大きく、字数が少ないことも関係している)。
特に「効率化」と「ゆとり」、「仕事」と「生活」といった、対立関係で語られることが多い事柄が、ちょっと意識を変えるだけで融合して自然な「形」になりうることを指摘しているところが面白かった。
普通のとは違った、ちょっとひねくれた意見を聞くのが好きな人に、オススメです。
2014/05/03
科学者という仕事
ちょっと珍しい、「科学者」という職業自体を解説した本。
科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか 酒井 邦嘉 (中公新書)
「科学者」という職業の定義はやや曖昧ではあるが、本書で解説しているのはおおよそ大学や(最近何かと話題の)理化学研究所などの公的な機関で主体的に研究活動をすることを生業としている人のこと、だと理解しておくといいだろう。科学とは何か、本来科学者がもっているべき哲学とはどんなものか、優れた研究をするためにはどんなセンスが必要なのか、それを得るためにはどんなプロセスを経てどんな訓練を積んだらいいのか、といったトピックについて、著者の考えに加えアインシュタインやチョムスキーをはじめとする過去の偉人達の言葉をふんだんに引用して解説している。ただこれはおそらく著者自身の性格がにじみ出ているのではないかと想像するが、全体的に大変「真面目」な見解になっている。現実にはこれほど厳格にストイックに科学者をしている人は少数派である気がする。私を含め多くの人はもう少しユルい感じでやっている気がするので、たとえ本書を読んで科学者の世界の敷居が高いように感じでも、実際は、きっと大丈夫なので心配する必要は無いと思う。いずれにしても、いわゆる「科学者」が、一体どんなことを考えてどんな動機でどんなことをしているのか、ということに興味がある人や、これから科学者になることを目指している高校生や大学生には、大変参考になる本だと思う。
科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか 酒井 邦嘉 (中公新書)
「科学者」という職業の定義はやや曖昧ではあるが、本書で解説しているのはおおよそ大学や(最近何かと話題の)理化学研究所などの公的な機関で主体的に研究活動をすることを生業としている人のこと、だと理解しておくといいだろう。科学とは何か、本来科学者がもっているべき哲学とはどんなものか、優れた研究をするためにはどんなセンスが必要なのか、それを得るためにはどんなプロセスを経てどんな訓練を積んだらいいのか、といったトピックについて、著者の考えに加えアインシュタインやチョムスキーをはじめとする過去の偉人達の言葉をふんだんに引用して解説している。ただこれはおそらく著者自身の性格がにじみ出ているのではないかと想像するが、全体的に大変「真面目」な見解になっている。現実にはこれほど厳格にストイックに科学者をしている人は少数派である気がする。私を含め多くの人はもう少しユルい感じでやっている気がするので、たとえ本書を読んで科学者の世界の敷居が高いように感じでも、実際は、きっと大丈夫なので心配する必要は無いと思う。いずれにしても、いわゆる「科学者」が、一体どんなことを考えてどんな動機でどんなことをしているのか、ということに興味がある人や、これから科学者になることを目指している高校生や大学生には、大変参考になる本だと思う。
2014/04/27
つながる脳
数年前ちょっとしたブームになってたように感じていた社会性に関する脳研究に関する本。
つながる脳 (藤井 直敬) (新潮文庫)
著者は理化学研究所 脳科学研究センターでチームリーダーとして社会性に関する脳研究を進めている。基本的に一般向けの本なのだと思うが、特に序章と第一章で脳科学そのものや脳科学研究者の現状や問題を赤裸々に語っている部分があって、同じ研究者として非常に興味深かった。なかなかここまでさらけ出すことが出来る研究者も少ないと思うし、見習いたいと思った。第2章以降は社会性に挑戦しようとする研究の現状が書かれていて、確かに大事だということは分かったけど、まだ有効な方法論が見つかっていないのかなという印象を持った。いずれにしても序章と第一章だけでも、脳研究者をはじめこの研究分野に興味のある人には是非読んで欲しいと思う。
つながる脳 (藤井 直敬) (新潮文庫)
著者は理化学研究所 脳科学研究センターでチームリーダーとして社会性に関する脳研究を進めている。基本的に一般向けの本なのだと思うが、特に序章と第一章で脳科学そのものや脳科学研究者の現状や問題を赤裸々に語っている部分があって、同じ研究者として非常に興味深かった。なかなかここまでさらけ出すことが出来る研究者も少ないと思うし、見習いたいと思った。第2章以降は社会性に挑戦しようとする研究の現状が書かれていて、確かに大事だということは分かったけど、まだ有効な方法論が見つかっていないのかなという印象を持った。いずれにしても序章と第一章だけでも、脳研究者をはじめこの研究分野に興味のある人には是非読んで欲しいと思う。
2014/04/21
食欲の科学
前から読みたいと思っていた、食欲に関する一般向けのブルーバックス。
食欲の科学 食べるだけでは満たされない絶妙で皮肉なしくみ (櫻井 武) (ブルーバックス)
前半では、摂食を栄養学的な面から制御する恒常的機構の分子メカニズム発見の歴史とこれまでの知見を概観できる。ラット同士の体を縫合して血液成分を共有するというマッドな実験内容に興味をそそられた。 後半では、摂食の情動的側面を制御する神経機構の説明がなされ、そこに睡眠・覚醒の神経機構との関連も軽く示され、視床下部および大脳基底核付近でそれぞれを制御する神経細胞達が互いに絡み合っている様子が目に浮かぶようでとても面白かった。と同時に摂食の分野はまだまだ分かっていないことも多そうだ、という印象を受けた。
食欲の科学 食べるだけでは満たされない絶妙で皮肉なしくみ (櫻井 武) (ブルーバックス)
前半では、摂食を栄養学的な面から制御する恒常的機構の分子メカニズム発見の歴史とこれまでの知見を概観できる。ラット同士の体を縫合して血液成分を共有するというマッドな実験内容に興味をそそられた。 後半では、摂食の情動的側面を制御する神経機構の説明がなされ、そこに睡眠・覚醒の神経機構との関連も軽く示され、視床下部および大脳基底核付近でそれぞれを制御する神経細胞達が互いに絡み合っている様子が目に浮かぶようでとても面白かった。と同時に摂食の分野はまだまだ分かっていないことも多そうだ、という印象を受けた。
2014/01/06
僕は君たちに武器を配りたい
先日、伊丹空港で見つけてパラパラと部分読みして即購入した本。
僕は君たちに武器を配りたい (瀧本 哲史)
本のタイトルからただならぬ雰囲気を感じたが、中身はもっとただならぬものであり、しかし同時に妙に納得できることが書かれていた。要は、これから日本は非情で残酷な社会になっていくから、ここに書かれている思想を携えて立ち向かっていきたまえ、という内容。普段仕事のこととかで頭がいっぱいになっていて社会全体の動きを考えた事がなかったので、とても新鮮だった。
その中で特に気になった指摘が「今後自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人は価値を失っていくだろう」という部分。これって僕のような普通の研究者のこと。。。読みながら飛行機の中でしばらくフリーズしていた。
それでもこの本を読み終えた時には、前向きに、頑張っていこうと思えた。
僕は君たちに武器を配りたい (瀧本 哲史)
本のタイトルからただならぬ雰囲気を感じたが、中身はもっとただならぬものであり、しかし同時に妙に納得できることが書かれていた。要は、これから日本は非情で残酷な社会になっていくから、ここに書かれている思想を携えて立ち向かっていきたまえ、という内容。普段仕事のこととかで頭がいっぱいになっていて社会全体の動きを考えた事がなかったので、とても新鮮だった。
その中で特に気になった指摘が「今後自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人は価値を失っていくだろう」という部分。これって僕のような普通の研究者のこと。。。読みながら飛行機の中でしばらくフリーズしていた。
それでもこの本を読み終えた時には、前向きに、頑張っていこうと思えた。
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