2013/08/07

ヒトとチンパンジーができるまで

最近、ヒトとチンパンジーのことを時々考えている。
ヒトとチンパンジーの共通祖先がいたのが600万年前。
エジプト文明が起こったのが5000年前。
つまりエジプト文明を起こした人達が出てきてから今の我々が出てくるまでにかかった時間のたった1200倍の時間でヒトとチンパンジーの差が生じたことになる。
エジプト文明を起こした人達と僕らなんて、知性とか見た目とか、ほとんど同じだろう。
そのたった1200倍で、ヒトとチンパンジーの差ができるなんて、にわかには信じ難い。
特に知性は、チンパンジーと他のサルとの差に比べてヒトとチンパンジーの差が著しく大きいことを考慮するとやはりヒトでなにかすんごいレアなことが起こったと考えられる。
たった1200倍の時間でこれほどの差を生み出すことを可能にした進化的変化。
面白くないわけがない。

2012/11/21

飲酒の進化的起源

美の進化的起源という講演を聞いた。
ヒトが美しいものを見たとき、なぜ心地よい気分になるのか、それを進化論で説明している。面白かった。
「美の進化論的起源」:Denis Dutton > TEDより

これまで自分の中で、進化論的になぜ「美」と「飲酒」でヒトが心地よい気分になるのかが疑問だった。Denis Duttonによる「美」の説明を聞いて、なぜか「飲酒」に関して思うことが出てきたので書いてみる。

単純に個体の生存という観点からすると飲酒という行為は悪い影響が強いように思われた。酔う事で判断能力や運動能力が低下し、活動の生産性も落ちて、しまいには捕食者の餌食になる可能性が高まると考えられたからである。このような行為で心地良くなってそれを繰り返す生き物がなぜ自然選択で残ってきたのか、それが疑問だった。
 しかしヒトがその祖先の時代から社会的な生き物である事を考慮すると、飲酒の良い影響が見えてきた。現実社会でもそういうことがあるが、飲酒により打ち解けてより多くの仲間とより親密になる事ができ、そうするとヒト社会の中でより優位になる機会も増え、結果的に異性からモテて子孫を残す確率が上がったかもしれない。また種々のストレスによる精神的疲労を回復させる効果もあっただろう。ただ、飲酒の生存や子孫繁栄に対する効果は、摂食や性行為などほど直接的ではないため、飲酒が苦手な人もまた多数生き残ってきたのだろうと考えられる。(さすがに摂食が苦手、というひとはいませんよね)


2012/02/13

ポスドクをいつまで続けられるか

僕は2006年の秋に博士号を取得したので、2012年2月現在でほぼ5年半経過した事になる。その間、博士号を取得したラボに居残ってそのまま1年ちょっと、国内の別のラボで3年半ちょっと、現在のベルギーのラボに半年弱在籍した。

博士号取得後5年半というと、早い人はPrincipal investigator (PI)になって自分のラボを主催している。PIになると多くの事柄について自分に決定権が与えられるので、自分の知りたい事を知るための研究がしやすくなる。そういった意味で非常に魅力的な地位である。でも例えば今、僕が運良くPIになる機会を与えられたとして、PIとしての役割を果たせるかというと、恥ずかしながらNOだ。その地位を使って自分の知りたい事を知るための研究をするのに必要な準備が全く出来ていない。

PIになるための準備を整えるには、現在のラボの後にもうひとつくらい、少し離れた分野の研究テーマでポスドクとして仕事をする必要があると考えている。しかし現在のラボの仕事を終えるのを3年後としてもその時点で博士号取得後ほぼ9年、年齢は36歳目前になっているだろう。そこからさらに3-4年とするとそれを終えた時点で年齢は40歳、なんと長男は11歳、中学生、思春期目前であり、長女は8歳で小学2-3年生である。経済的に、稼ぎ手が僕だけではとても無理である。残念ながらこれが現実なので、嫁が仕事を出来る環境で共働きするしかない。そう考えると、ポスドクを40歳手前まで続けるというのは非常に自己中心的な感じもしてくる。甲斐性がないため嫁を働かさざるを得ない状況というのは大変心苦しい。それでもいつかそれを乗り越えて、家族に「続けてよかったね」と言ってもらえる状況を作ることを目指していきたい。

僕より若い人へ。
PIとしていい研究をするために必要な能力を、早めに習得するための手段を計画されることをお勧めします。

2011/09/20

「Wild type」の多様性

僕ら研究者は、ゲノム上の配列異常がある個体に対し、それが正常な個体をwild typeと呼んでいる。つまり特定の個体がwild typeかどうかを判断するには、議論の的となる配列が決まっていることが必要。注目する配列があって初めてwild typeが決められる。

最近ヒトを含む動物において、同一種の中でもゲノム上の配列に著しい多様性があることが明らかになってきた。従ってゲノム上の特定の配列について、自分が、あるいは目の前にいるヒトが、いつも使っているcell lineが、wild typeであることを主張するためには、その多様性を考慮しても正常、すなわち大多数と同じであるということを明確に示す必要がある。

自分の実験をwild typeをベースにして行うことは重要である。前述の通り、wild typeをベースにしているということは、その結果からその種の代表的なゲノム配列について議論できることを意味しているからである。

しかしここでひとつ注意が必要だと思う。たとえあるゲノム配列についてwild typeである個体間でも、他のゲノム配列については異なっているこということが十分にあり得る。実際我々の多くはある特定のゲノム配列についてはwild typeであるが、互いに顔も背丈もかなり多様であるのはそのためだろう。従って、あるゲノム配列についてwild typeであると判断されたヒトなり細胞なりで得られた結果からは、その種で代表的なゲノム配列について、その特定のヒトなり細胞なりにおける機能などを結論ができるが、ヒト一般、細胞一般における機能などについては結論できない。ヒト一般、細胞一般に関する結論を得るためには、注目しているゲノム配列がwild typeであるということを示し、さらにそれ以外のゲノム配列についてできるだけ多様なヒトなり細胞なりでも同じ結果が得られることを示す必要があると思う。

最近の研究から個体間の多様性が明らかになりつつあることを背景として、今後生物の研究においては、ある結果についてより一般性の高い結論を得るためには、できるだけ多様なwild typeで同様の結果が得られることを示すことが重要になっていくだろうと思っている。

2011/08/04

サイエンスカフェ

「WEcafe」というサイエンスカフェに初めて参加し、一般の方々に最近の研究成果に関するお話をしてきました。

Link1: WEcafe 公式ページ
Link2: 参加された方のブログ。写真など
Link3: Togetter - 「WEcafe vol.18 「神経細胞の歩き方 in 脳」まとめ」

参加者は10名程度でした。一般の方々にこう行った形で研究の話をするのは初めての経験でしたが、まさにカフェでみんなで雑談をするような雰囲気で、楽しかったです。