2012/11/21

飲酒の進化的起源

美の進化的起源という講演を聞いた。
ヒトが美しいものを見たとき、なぜ心地よい気分になるのか、それを進化論で説明している。面白かった。
「美の進化論的起源」:Denis Dutton > TEDより

これまで自分の中で、進化論的になぜ「美」と「飲酒」でヒトが心地よい気分になるのかが疑問だった。Denis Duttonによる「美」の説明を聞いて、なぜか「飲酒」に関して思うことが出てきたので書いてみる。

単純に個体の生存という観点からすると飲酒という行為は悪い影響が強いように思われた。酔う事で判断能力や運動能力が低下し、活動の生産性も落ちて、しまいには捕食者の餌食になる可能性が高まると考えられたからである。このような行為で心地良くなってそれを繰り返す生き物がなぜ自然選択で残ってきたのか、それが疑問だった。
 しかしヒトがその祖先の時代から社会的な生き物である事を考慮すると、飲酒の良い影響が見えてきた。現実社会でもそういうことがあるが、飲酒により打ち解けてより多くの仲間とより親密になる事ができ、そうするとヒト社会の中でより優位になる機会も増え、結果的に異性からモテて子孫を残す確率が上がったかもしれない。また種々のストレスによる精神的疲労を回復させる効果もあっただろう。ただ、飲酒の生存や子孫繁栄に対する効果は、摂食や性行為などほど直接的ではないため、飲酒が苦手な人もまた多数生き残ってきたのだろうと考えられる。(さすがに摂食が苦手、というひとはいませんよね)


2012/02/13

ポスドクをいつまで続けられるか

僕は2006年の秋に博士号を取得したので、2012年2月現在でほぼ5年半経過した事になる。その間、博士号を取得したラボに居残ってそのまま1年ちょっと、国内の別のラボで3年半ちょっと、現在のベルギーのラボに半年弱在籍した。

博士号取得後5年半というと、早い人はPrincipal investigator (PI)になって自分のラボを主催している。PIになると多くの事柄について自分に決定権が与えられるので、自分の知りたい事を知るための研究がしやすくなる。そういった意味で非常に魅力的な地位である。でも例えば今、僕が運良くPIになる機会を与えられたとして、PIとしての役割を果たせるかというと、恥ずかしながらNOだ。その地位を使って自分の知りたい事を知るための研究をするのに必要な準備が全く出来ていない。

PIになるための準備を整えるには、現在のラボの後にもうひとつくらい、少し離れた分野の研究テーマでポスドクとして仕事をする必要があると考えている。しかし現在のラボの仕事を終えるのを3年後としてもその時点で博士号取得後ほぼ9年、年齢は36歳目前になっているだろう。そこからさらに3-4年とするとそれを終えた時点で年齢は40歳、なんと長男は11歳、中学生、思春期目前であり、長女は8歳で小学2-3年生である。経済的に、稼ぎ手が僕だけではとても無理である。残念ながらこれが現実なので、嫁が仕事を出来る環境で共働きするしかない。そう考えると、ポスドクを40歳手前まで続けるというのは非常に自己中心的な感じもしてくる。甲斐性がないため嫁を働かさざるを得ない状況というのは大変心苦しい。それでもいつかそれを乗り越えて、家族に「続けてよかったね」と言ってもらえる状況を作ることを目指していきたい。

僕より若い人へ。
PIとしていい研究をするために必要な能力を、早めに習得するための手段を計画されることをお勧めします。