2014/06/20

銃・病原菌・鉄

数年前にベストセラーになっているのでもう読んでいる人が多いかもですが、この本。

  文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (ジャレド・ダイアモンド) (草思社文庫) 

これは本当に面白い本だった。
「今のこの世界がなぜこうなっているか」という、一見どこから手を付けたらいいのか分からないような問題に、様々な分野の知見を統合することで答えを見いだしていこうという壮大な試み。
答えに近づくために一歩一歩思考を重ねていく。その一歩一歩が全部面白い。 全部はとても書ききれないけど、例えば人類進化の一部に関しては以下のような記載がある。 

ネアンデルタール人は、クロマニョン人が現れる約4万年前まで数十万年に亘りヨーロッパで生息していた。
しかし彼らはクロマニョン人の出現から数千年で完全に姿を消してしてしまった。ネアンデルタール人とクロマニョン人が交配した証拠はほぼない。
クロマニョン人がネアンデルタール人を殺戮した可能性が高い。

ネアンデルタール人の脳は、現代人よりも大きかった。 しかし彼らは原始的な石器しか用いず、その狩猟に命の危険を冒すことの無い獲物のみを食料としていた。
一方、クロマニョン人は脳の大きさ自体はそれほど変わらないにもかかわらず、高度な石器をはじめ、獲物の骨を加工して針や槍を作製し、大型の動物や魚も捕らえて食料としていた。 また彼らが描いた壁画は現代においてもその価値が認められる程に芸術性が高い。

ネアンデルタール人とクロマニョン人の知的能力の差は、脳の大きさの差では説明出来ない。 代わりの説明として、咽頭の変化による発話能力の差や、脳の容量の変化を伴わない神経系の機能的な差が引き金となったことが提唱されているが、今でも何が彼らの知的能力の差を生み出したのかは明らかになっていない。

と、こんな興味深いことがわんさと書いてある。

人類史に興味がある人はもちろん、ない人にもに是非おすすめしたい。

2014/06/01

海外研究留学 助成金 一覧リスト

自分が研究者として海外留学する際に応募を検討した、主に日本の組織の助成一覧。

日本学術振興会 海外特別研究員 
上原記念生命科学財団
ヒューマンフロンティアサイエンスプログラム(HFSP)
持田記念医学薬学振興財団
アステラス病態代謝研究会
かなえ医薬振興財団
神澤医学研究振興財団
村田海外留学奨学会
東洋紡百周年記念 バイオテクノロジー研究財団
中嶋記念国際交流財団
中冨健康科学振興財団
万有生命科学振興国際交流財団
臨床薬理研究振興財団
日本心臓財団・バイエル薬品
鈴木万平糖尿病学国際交流財団
先進医薬研究振興財団
内藤記念科学振興財団
山田科学振興財団
第一三共生命科学研究振興財団
<医師のみ申請可>
ファイザーヘルスリサーチ研究財団
安田記念医学財団

パソコンを整理していたら出てきたものをそのままのせているだけなので網羅は出来てないと思いますが、研究留学を検討している人の参考になれば。

仮説: 「過去」の研究者には周囲からの愛が足りていない

僕ら30代は間違いなく100年後には死ぬ。ここ数十年で科学が進歩しても、まあ変わらないだろう。

人類の進化史とか観ていると、1万年くらい前から農耕やら狩猟やらがでてきて今の世界の形成に直結するような出来事が起こってくるわけだけど、そのスケールからしたら100年なんていうのは1/100である(ちょっと言い回しがエラそうになっているのは直前に読んだ本の著者である村上龍氏の影響?)。その1/100の時間に、100倍の時間スケールの人類史に想いを馳せたり、自分の前の研究対象であった「ほ乳類の起源」なんていうのは3億年も前だから300万倍もの時間スケールの進化史に想いを馳せたりすると、自己愛が増幅する。そういった大きなスケールに想いを馳せると、それと比較して自分が小さいことを実感するとかそんないかにもな感覚は湧いて来ず、逆に消耗品のオス(龍氏の影響受け過ぎ)である自分にもいいものがあることが感じられるのである。

歴史は、自分に価値があることを感じさせてくれる。これはウォーレスとダーウィンの進化論のお陰である。生き残って今ある自分は、その存在自体により自動的に「勝者」、すなわち価値のある存在であることが保証されるのである(ここで「勝者」という単語についている「」は進化論の文脈であることを意味している)。これは別に新しい意見ではないのだが、意外とみんな普段は自覚していないのではないか。でも実はこの思想は全ての人に最低限の尊厳を保証する思想であり、全ての人はこの思想をベースにもっと自信を持ってもよさそうなものである。が、多くの人はそれに頼らない。おそらく大部分の人はそれに頼らなくても自己愛が成立しているのだろう。そう考えると、この最低限の尊厳を保証してくれる思想をまといながら日々生活しているであろう、進化や歴史などの「過去」の学者は、それ無しには自己愛が成立しないほど貧しい状態にあるのかもしれない。

仮説: 「過去」の研究者には、周囲からの愛が足りていない。
(ちなみにほ乳類の起源を少し研究していた私はたびたび自画自賛タイプであると評される。= 1。)